カニクイザルに認められた類表皮嚢胞の1例

○荒木しおり、岡崎勇、左近上博司、谷口雄三、藤井登志之(滑ツ境バイリス研究所)

 当研究所において9ヶ月間飼育している、中国産カニクイザル(4歳・無処置)の定期的触診で皮下に複数個の結節を認めた。結節は頭
部、顔面、背部、前腕、下肢に認められ、合わせて7個確認できた。大きさは4〜18mmであった。このうち一番大きい背部の結節を採取し
、病理組織学的検査に供した。

 
 皮膚切開時の肉眼的観察で結節は真皮内に認められ、柔軟で周囲との境界が明瞭であった。結節は嚢胞状を呈し、割面はひ薄な嚢胞
壁を有し、内部は灰白色軟性物質であった。HE染色標本による病理組織学的観察では、嚢胞壁は全層表皮組織により形成され、嚢胞内
には角質組織の充満が認められた。以上の所見から類表皮嚢胞と診断した。

 類表皮嚢胞は通常真皮内に蝕知される小結節である。発生原因を明確にするのは困難であるが、先天性や家族性に発生する場合と、
外傷や昆虫刺傷、またウイルス感染によって発生する場合もある。今回のものは何れも外傷跡が見られず、多発性であったことから先天
性あるいはウイルスにより発生した可能性がある。しかし現在のところ、同飼育室に同様の症状が現れた個体は認められない。

 現状では動物への影響は殆どないと思われるが、大きくなって神経を圧迫したり、破裂したりすると問題であるので経過観察し、必要に
応じ外科的除去等行う。また通常サルの外観観察では被毛に覆われている部分は見逃しやすい為、今後とも定期的な触診を充実させる
べきであると考えている。